小 話

新緑の頃

片山宣子

 4月も中旬を過ぎると山は新緑に包まれる。様々な木々が新しい芽吹きで複雑な色合いを見せてくれる。赤紫系統から灰白色までの幅広い色調、緑のグラデーションも豊かに山全体が正に新緑の季節である。

 この時期になるといつも思い出すのは50年前に俳句について教えていただいた青山なを先生のことだ。粋な和服姿と鼻筋の通ったお顔。梅ケ峠の山々の、新緑の息吹をため息交じりに眺めながら「緑の毒気に苦しくなる」と語っておられた。あの頃の私は若く、繊細な先生の感覚は理解できず、ノートに先生の似顔絵をスケッチするのに夢中だった。でも不思議に先生の言葉は印象に残り、今も覚えている。

 現在、私は先生の年齢に近づいているが、この時期を乗り切るにはかなりのエネルギーを必要とする気がしている。自分の誕生月が近くなることも関係するのかもしれないが(年齢を一つ重ねるという思いは大きい)、圧倒的な自然のエネルギーに対峙する内なる力が必要だ。毎日の雑多な忙しさの中で自分を見失わずに明るく生きていくこと、納得できる自分らしさを持ち続けることは簡単ではなく難しい。そんな思いに打ちのめされて新緑のエネルギーに打ち負かされ日が続くこともある。苦しい日々ということもあるのだ。

 話は全く変わるが、先日親戚で集まることがあった。おいしい食事をいただきながら、50台になる理系の現役世代と60代で資格を生かして第二の仕事をしている二人の男性と私の三人で話が弾んだ。海外に住むことが多く、やっと日本も面白いと感じるようになった50代は、今、農業に関心大で、農業と科学知識で新しいことを生み出したいと意欲的に仕事を楽しんでいる様子。話が竹林のことになり、竹の利用について話していた時、60代が、こちらは建設業を長くした人物だが、「僕らの業界では竹は水分を多く必要とするもので、竹林のある場所は工事を避けたい地盤だと見るよ」と話しだす。本当に面白い。人は自分の知識や経験で自分の見方を構築する。だから同じものが違って見える。なるほど、だから異業種交流が必要だし、異文化、異なる意見が重要になる。知識や経験の重要性、陥りやすい独善性にも思いが拡がる。学び合うのは面白いし、心も頭もお腹も満足の午後だった。

 最後に、同窓会総会・懇親会に出て久しぶりに友と会い、それぞれの見方で、いろいろと語り合うのも楽しいと思いませんか。お待ちしています。

四月

片山宣子

 今年は、4月1日が土曜日であったため、年度初めが3日からというところが多かったようだ。テレビニュースの入社式報道が四分休符の後みたいな印象があった。エイプリルフールの話題が耳に入らなかったのは、私の年齢のせいだろうか?それとも現実がエイプリルフールみたいで、しかも笑えないそれであるようなことが多いせいだろうか・・・?

 取り留めないそんな思いとともに4月が始まった。

 学院では長年院長職を務められた中野新治先生が退任され、理事会で樋口紀子学長兼任ということが決定され、発表があったとお聞きした。大学は4月3日が入学礼拝、中高は7日が入学礼拝である。大学は昨年度に続き定員を上回る入学生を確保したと聞いている。多くの方々の努力があったのだろう。中高の入学生は苦戦しているようである。7日の入学礼拝に参加してみようと思っている。新校長の下で新年度が始まる。入学生の希望に満ちた挨拶に期待したいし、真新しい制服姿も楽しみだ。下関は春冷えが続く天候のせいでいつもより桜が遅く、7日の入学礼拝の頃が見ごろになるだろう。

 我が家でも今、五分咲きである。この桜は植えて30年を超えたのでなかなか美しい。今年は花付きもよく、毎朝桜を観察することが日課になっている。5輪の花が咲くのに4日かかった。五分咲きの今日は、春の嵐のような風の中で枝を揺らしながら咲いている。小雨も降っているが若い花はその色や可憐さを損なうことはない。気づけば海棠の花も咲きだしている。例年だと桜が散ってから咲くのだが。田舎道の土筆も今年は遅く数が少ない。移り行く季節の中で不順な気候の変化は小さな一つひとつに表れているようだ。当たり前のように季節は巡っていくのであるが小さな変化に心を留めてみたい4月である。

春の仕事

片山宣子

 風が冷たい。わずかでも日差しがあるとその温かさに嬉しくなる。そんな春の日、ミカンの苗木を植えている。天気が目まぐるしく変わり霙も降ってくる。

 仕事を辞めた後の生活は、田舎暮らしにふさわしくできるだけ自給自足に近い生活をしてみよう。その為には自分の手足をできるだけ使う生活をしよう。時間をぜいたくに使い丁寧な暮らしがしてみたい。等々。農業の一年生スタートとして考えていたが、農作業はそんなに甘くない。連れ合いは1メートル近い穴を掘りたい肥を入れ苗床を作り準備する。土がこなれ苗を植えるのだが、苗木の細い根を傷つけないように拡げて大事に土をかけて植えていく。十分に固めた上から水もかける。腰も痛いし、ゴム引きの手袋の中の手もかじかんでくる。土と付き合うことは無心の忍耐力が必要な気がする。合理的に、手早くと考えてしまう自分の在り方が太刀打ちできないと思わされる経験だ。

 夜、テレビでさまざまな外国人の意見を聞く番組があり、日本の傾きかけた会社が全員掃除で再生に成功したという事例を扱っていた。全員に掃除を強制するのは賛成できない。(なるほどと頷ける)自分は頑張って教育を受けたのだから掃除をしろと言われるのは侮辱されたと感じる。(?これは頷けない)この意見に同意する人が少なくないことに驚いた。

 教育が格差を生み出す現実は残念ながら今や事実であるが、その格差を埋めていく働きも教育の目標なのではないか?高等教育を受けた自分は掃除よりもっと高度な仕事で能力を発揮する方が合理的と考えるのは善なる価値判断だろうか?いろいろ考える。

 掃除するしかない人々を、自分のことのように考えるという価値観を柔軟に持ち続ける人間でありたいと思いながら、少なくともその努力はしたいと思いながら畑の草を抜いている。終わりのない春の仕事である。

寒中お見舞い申し上げます

片山宣子

 昨年は天災や人災が続き、社会情勢も揺らぎの多かった年でした。新しい年も変化や混迷の予感ばかりが語られますが、皆様お元気でしょうか?

 今日、下関は寒風にさらされています。山陰の海岸は打ち寄せる白波で、191号線を走ると車は潮しぶきをたっぷりと浴びました。

 さて、年の初めの同窓会は新会員を迎える準備と大学・短大卒業生の会「海峡会(仮称)」の成功を目指します。「海峡会」は大学短大の卒業生の親睦交流会です。これを契機に学年を超えて人のつながりが生まれることが望まれます。同窓会誌の準備も始まりますし、総会もあっという間に近づくことでしょう。考えると心配になりますが、この寒さの後には立春を迎えるように、未来の展望は必ず開けるものだと信じて頑張りたいと思います。宜しく応援下さい。

 皆様のご健勝をお祈りいたします。お風邪を召されないように・・・。

クリスマスの季節

片山宣子

 12月の同窓会事務局は、なんだか大変あわただしい。安成さんが、80歳以上の同窓生へ送るクリスマスカードの準備、磯谷さんは傘寿のお祝いのお茶の準備、畠中、北村、岩男さんはメールのチェックや会員登録の整理をする。あまり広くない仕事部屋は熱気に満ちている。コール梅光のチャリティーコンサートは盛況のうちに実施できて本当に良かったと明るい話題で盛り上がる。時間があっという間に過ぎていく。

 12月、今年最初のクリスマス礼拝は、コール梅光のコンサートの礼拝だった。「風に立つライオンでありたい」という福岡YMCA理事長齋藤皓彦先生のメッセージは胸に響き勇気を与えられるものだった。(ああクリスマスを迎える意味を考えよう。様々な災害に見舞われた多くの人々が、この自分であっても何の不思議もない事実を胸に刻みたい。等々、色々な思いが沸き上がる)

 17日(土)は中高のクリスマス。女子校最後の高校三年生が、丸山の丘でハレルヤを歌う。生徒たちにとっても心痛むことが多かっただろう一年がどのような祈りになってクリスマス礼拝が持たれるのだろう。良いクリスマスであって欲しい。

 22日(木)は大学のクリスマス礼拝。今年から学生数が増えたので学生中心のクリスマスになり、いつもハレルヤコーラスの助っ人だったコールの出番はなくなった。18歳から90歳(以上も)まで、いつでもハレルヤが一緒に歌える学院という伝統を体現していたものが消えるのは残念な気もする。だが、定員確保は喜ばしいことでもある。

 自宅には教会からクリスマスコンサートや礼拝のお知らせが届く。通知にも個性があるが、聖書のみ言葉が小冊子になって届いたのは嬉しかった。やはり12月は聖書の言葉に立ち返りたい。私自身は何度もクリスマス礼拝を重ねるのには抵抗もある。喜びの時だが、静かに過ごすことの大切な時期だと思うからだ。ベツレヘムの12月の深夜はきっと深い静寂に、慎ましい人の心に満ちていたと想像する。冬の寒さの中で、冷たい夜気を吸い込み夜空を眺めたい季節なのだ。

佐藤泰正先生召天一年記念礼拝

 召天日の11月30日、13時より下関教会で執り行われた記念礼拝には、約40名の人が集まりました。卒業生有志をはじめ、先生と出会った人々が静かに佐藤先生を偲び、先生の深い人柄を思い起こす時となりました。

 一部は下関教会三輪従道牧師の司式による礼拝でした。
 ローマの信徒への手紙7章7~25節の朗読に続き、佐藤先生の文学者としての「人間探求」が、同時に「福音の準備」の働きであったことが、聖書の語る罪の問題と共に語られました。また常に穏やかで威圧感とは無縁の本物の存在感を持つ先生のお人柄の魅力が今も鮮やかに生きていることが語られました。

 二部は思い出を語る会でした。
 吉津先生・武原先生・安富先生・伊豆一郎さん(大学卒業生)などが語り手でした。
 佐藤先生が、教え子、同僚、後輩の教師を励まし育てて下さったことが様々なエピソードと共に語られました。
 中でも、この日先生のご命日だから何としても教会で祈りたいと、記念礼拝のことは知らずに参加された「百花の会」のお二人のお話と詩の朗読は印象深いものでした。
 先生が市民グループの現代詩の学び「百花の会」を40年以上に亘り指導されていたことが紹介され、参会者はあらためて先生の深い情熱や広範な人間関係に心打たれました。  「佐藤先生に出会った人生は、それまでの人生、出会わなかった人生とは全く違うものになりました。」という「百花の会」の方の言葉を、一人ひとりが胸に刻むひと時でした。

 最後に安富恵子先生から奥様、亰先生の近況が報告されました。(多くの卒業生が美術の授業を受けたことを思い出されることでしょう。)亰先生はご親族やヘルパーさんの支えを受けて穏やかにお元気にお過ごしとのことでした。

*先生を偲ぶ集いとしては、大学院卒業者を中心とした「はまゆう会」主催の会やアルスの特別講演会などもありました。(報告者 片山宣子)

下関教会「召天祈祷会」に参列して

 「召天者記念礼拝」が下関教会でありました。11月6日午前10時15分、礼拝開始。梅光関係者、とくに広津家の納骨や今年8月昇天された滝本先生の納骨も執り行われるという事で同窓会役員も参列しました。
 廣津藤吉、廣津信二郎、廣津ヤス、廣津シガ、前田よしえ、滝本哲也、井本文子、他の協会員の方々、13名の遺影が飾られました。廣津信二郎先生の御子息の健さんご夫妻もお見えになりました。
 三輪牧師が「主と共に眠る者の幸い」という題でお話をされました。
 その後、教会墓地のある観音霊園に移動して、墓前礼拝と納骨式が行われました。
 初冬の暖かい青空のもと、関門海峡を見下ろす静かな墓地で永遠の眠りにつかれました。同窓会からの花も飾られました。 同窓会からは片山と磯谷が出席しました。

「秋深まる」

片山宣子

 10月中旬から11月初旬にかけて、下関近郊の町々でも様々な行事が開催される。地区の小学校や幼稚園と連携しての運動会、地域活動の発表会の文化祭などである。収穫を終えたこの時期には神社の秋祭りもある。東京ではハロウィーンに向けてのイベントがあるようでニュースを賑わせている。楽しい文化の秋満載という風景だ。
 私も退職後、地域のボランティア活動に参加している関係で参加する行事もあった。しかし一方では、人口の減少をその度毎に感じている。60代、70代、80代の人たちが行事の主体者である。若者、子供が少ない。東京のハロウィンナイトの様子とは大違いである。私用で時折上京するが、「人口密度」「若者たち」という言葉を実感するのがその折で、地方との格差を強く感じてしまう。実際はその東京も人口減少に向かっていくようであるが。
 私は地方が好きである。ニュースでさまざまな事象が伝えられる時、今流行りのコメンテイターが「でも経済効果がありますよ。凄いですね」とまとめる姿に胡散臭さを覚え、日本人はどのような文化や価値観を根っこに持ちたいと考えているのかと独り言を呟いている。世界からクールな日本と評価される根底にあるのは何だろうか。GNPではないだろうと思うのである。自然から育てられる豊かな感性、人や物に対する丁寧で真摯な姿勢、時に対する穏やかな向かい合い方などの価値は再認識されるべき根底ではないだろうか。深まる秋はいろいろと思考を促す力があるようだ。
 野道には、黄色いツワブキの花が咲いている。海の近いこの辺りでは、この可愛い花はアラカブを釣りに行く合図でもある。一刻秋を楽しもう。

「9月」

 9月の彼岸が過ぎるこの頃、下関近郊ではあちこちで稲刈りが行われ、あぜ道に真っ赤な彼岸花が咲き始めます。彼岸花は曼珠沙華とも呼ばれますが、「葉見ず花見ず」とも呼ばれるとか、よく言ったものだと古人の観察眼と言語感覚を面白く感じます。野ネズミから田の畔を守るために毒を含んだこの植物を植えたという知恵にも驚きますし、それを捻挫の湿布薬にも使ったとか、生活から生まれる知恵の豊かさは感動モノです。(何も河豚を食した歴史を教科書で読むだけではないな・・・)

 花言葉は色々あります。「あきらめ」はわきに置いて、「情熱」「独立」「再会」などの花言葉が今の私にはいいなと思いながら花の群れを眺めているこの頃です。

「酷暑・八月」

 毎日暑い日が続きますが、同窓生の皆様、お元気でお過ごしでしょうか?

 同窓会誌の発行が一段落した7月から、新しい本部体制の活動が始まりました。総会の時にホームページの立ち上げをお約束しましたが、やっと始めることができました。このHPを、これから同窓生みんなで一緒に育てていきたいものです。情報をできるだけ早く発信し、広く意見を聞きたいと思います。パソコンが苦手とおっしゃる方もおありだと思いますが、どうか同窓の友人や家族の助けを通して参加していただきたいと思います。「YOU・友・遊・座」は、趣味や特技を楽しむことで交流を深めたいと設定をしています。先ずは俳句や川柳、短歌や詩などを自由に寄せて下さい。生活雑感を300字以内にまとめたエッセイなども楽しみですね。参加者みんなで自由に創り、育て、交流を深めましょう。

 さて、この度の会誌発送後、宛先不明で返送されたものが700余通ありました。住所変更もHPからできるようになりました。ご利用ください。また、早速に運営費へのご協力をいただいております。本当に感謝でございます。ありがとうございました。今後ともご支援いただきますようお願い申し上げます。下関では8月13日関門花火大会があります。関門地区に久しぶりのご帰省を計画なさっておられる方もいらっしゃるでしょう。ご自愛くださり楽しい八月をお過ごしください。